印刷マニアック

2023年 ポストコロナの印刷業界 近未来予想 ―その1―

日本の印刷業界の現状と課題

はじめに

いつも印刷マニアックをご愛読いただき、誠にありがとうございます。富沢印刷株式会社の代表取締役を務めています富澤隆久と申します。

今回から複数回にわたって、これからの業界動向を考察していきます。印刷業界に勤めている多くの同業の皆さまへ、業界活性化の一助となるメッセージとして発信します。皆さまからのご意見・ご質問、大歓迎です。よろしくお願いします。

  1. 20年前と全く変わらない請負型製造業マインド
  2. 間に合った! 間に合わせてくれた! が、価値の中心
  3. 同時並行で、本当のニーズを解決しなければならない
  4. 【結論 その1】本当のニーズは、自社内にある

1. 20年前と全く変わらない請負型製造業マインド

まずは、現在の印刷業界の現状を改めて見てみましょう。少し私の思い出話にお付き合いください。私は2001年に富沢印刷へ転職し、入社しました。32歳の時です。入社直後、富沢印刷は、私に1つのセミナー受講の機会を与えてくれました。今でも忘れませんが、セミナーでは、花井秀勝氏(*1)が登壇されて、次のことを受講者全員に力強く説いていました。

これまで通りの仕事だけをしていてはいけない!
お客さまの課題を解決することが印刷業の仕事だ!
印刷物の目的、効果をトコトン考えて、提案しろ!

*1: フュージョン株式会社・代表取締役会長
学校法人日本プリンティングアカデミー・理事長
(2022年10月現在)

私は、花井氏のメッセージを心に刻み、以来20年以上印刷業に身を置き、富沢印刷を経営してきました。しかしながら、当社の印刷営業マンの中でさえも、ソリューション提案がまだまだ定着しきってはいません。周りの多くの印刷会社を見渡しても、残念ながら、こうした創注マインドを持った方には滅多に出会いません。つまり、印刷業界は20年前と全く変わらない請負型マインドで固まり続けていると言えるのではないでしょうか?

2. 間に合った! 間に合わせてくれた! が、価値の中心

これは仕方のないのことだと思います: 理由1)1400年代半ばにグーテンベルクがヨーロッパで初めて活字による印刷を行ったとされる「ルネサンス三大発明」の印刷は、10枚でも10万枚でも原版見本と全く同じ印刷物を生産することが大命題であり、「前回見本通り」という慣性の法則にどっぷりと浸かってしまっているからです; 理由2)印刷物はそのもの自体が媒体の現物なので、物質的な品質(Q)、コスト(C)、納期(D)に企業努力を傾けることが正道であり、お客さまへの誠意であるとした下請け安住主義に甘んじてきたからでもあります。とりわけ、印刷営業マンは、以下のイラスト(*2)のように納期信奉から抜け出せないのが現状ではないでしょうか? もちろん、ものづくりとしてのDは重要なファクターではありますが…。

*2: 間に合った! 間に合わせてくれた! が、価値の中心

3. 同時並行で、本当のニーズを解決しなければならない

お客さまの真の課題を解決すること、もしくは解決するためのサポートをサービスとして提供すること、これをこれまでの製造業としてのQCDをクリアした上で、追加して、同時並行で取り組む努力を個々の印刷会社はしなくてはならないと、私は強く訴えたいです(*3)。

*3: デジタル化の波

新型コロナウイルス感染症の影響により、デジタル化の潮目はすでに到来しています。では、お客さまが抱えている本当の課題とは何でしょうか? そして、それを見定めるにはどうしたらよいのでしょうか?

4. 【結論 その1】 本当のニーズは、自社内にある

お客さまが本当にお困りで、本当に解決したいと思っている本当のニーズを見つける方法は意外と簡単です。それは、皆さまの個々の会社内で抱える課題を改めて考えてみれば、それらがお客さまのニーズにも簡単に当てはまるのです。


それでは皆さまに質問です。御社の中で困っていること、課題に感じていることは何ですか?

  • 「売上が減っている」→これは確かにお困りごとですね。ただし、もう少し、深く考えてみましょう。
  • 「減っている売上を回復したい」→どうやって回復しますか?
  • 「これまでとは異なった新しい手法で、ホームページやWebを使って、人手をかけずにラクして売上を伸ばしたい」→ここまで思考が伸びてきましたら、とりあえず充分ではないでしょうか。

ということは、御社のお客さまも、「これまでとは異なった新しい手法で、ホームページやWebを使って、人手をかけずにラクして売上を伸ばしたい」と少なからず思っているということです。そして、御社のやるべきことは、「ホームページやWebを使って、人手をかけずにラクしてお客さまの売上を伸ば」す具体策やサポート策を提案し、解決策をお客さまとともに充分に検討し、お客さまに最適なソリューションを提供することです。


「そんなこと、すぐにはできないよ!」と皆さまはおっしゃるかもしれませんね。そうだと思います。これまで請負型で、前回見本通りで、QCDに全力を傾けてきたのですから。

具体的な実践方法のヒントは、次月のその2の記事をお待ちください。
ご意見、ご感想をお待ちしております。

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