デジタルマニアック

DXとは?【その4】 — 「アジャイル」の考え方で印刷会社のDXに挑戦!

印刷会社のDXが進まない理由【その4】

1. アジャイルとは?

アジャイル〔agile〕は、動きが俊敏な、機敏な、頭の回転の早いなどの表す英語の形容詞です。名詞は〔agility〕で「機敏さ」という意味になりますが、犬に障害物を越えさせ、そのスピードと正確さを競う競技にも〔agility〕という名称がつけられています。本稿ではソフトウェア・エンジニアの間で使われている「アジャイル開発」を主に解説していきます。

アジャイル開発とは、短いサイクルでソフトウェアの開発とリリースを繰り返すという手法です。[*1]

2. ものすごく簡単に言うと…

DXの推進という観点に置き換えて、「アジャイル」をものすごく簡単に言うと:

  • 成功するか、失敗するかわからないけれど、とりあえず試しに<情報・数値>の<共有化・見える化>というカイゼンをどこからでもいいのでやってみる。それがDXのスタート。
  • 失敗するリスクを考えたり、「社内がギスギスしたらヤダなー」などの言い訳ばかりだと<バタ貧>になる。
  • 失敗してもリスクが少ないように小規模のカイゼンからやる。どれが成功するか判らないから、2~3個以上のカイゼンを同時にやる。
  • 経営者が独りで悪戦苦闘すると<バタ貧>になるので、社員の皆さんを巻き込んで小グループで前向きに2~3個とりあえず挑戦する。
  • 失敗したり、上手く進まなくなったら、そこが重要! 失敗の原因は何か、何が足りなかったのか、どこまで戻ってやり直さなくてはいけないのか、じっくりメンバーで考えぬく。
  • アジャイルの根底にある考え方は「カイゼン」(1)。これを忘れないこと。「カイゼン」とは、今までの業務がラクになる、早くなる、明らかになる、目標が見えやすくなる。ラクにならなければ「カイアク」。
  • アジャイルの根底にある考え方は「カイゼン」(2)。カイゼンのツボは現場の皆さんが最もよくわかっている。「IT人材が社内にいないので、外注しなくちゃ!」、「これじゃ余計なお金がかかるよ…」、いえいえ、そっちの方向じゃない! DXが誰でも簡単にできるIT技術がたくさんある、今はそんな時代だということを知っておくこと。

3. 完璧主義は善か悪か?

「バッテリーの法則」という言葉があります(ました)。スマホはバッテリーを充電するのに1時間ほどで8割が完了します。しかし、残りの2割を充電するためには4時間くらいかかります(現在では高速充電、長時間バッテリーが開発されていますので、少し事情が異なります)。仕事も同じで、仕事上手な人は短期間で8割程度をやって仕事をパス(ホウレンソウ)します。残りの2割は細かな部分なので、時間がかかる割に成果が伸びないという現象が起きてきます。[*2]

印刷業は完璧主義に属するプロフェッショナルではないでしょうか。1文字でも誤植があればすべて刷り直し、少しでも刷色にブレがあれば刷り直し、完璧を目指して、1%のミスも許されない世界です。これは品質やサービスの質で良い面もありますが、内からの変化が起きにくいという悪い面もあります。DXも同じことです。初めてやることですので、失敗して当り前、つまずいて当然です。8割できたら文字通りパーフェクトですよね。

もしも、あなたが初めて釣りを始めてみようと思ったら、釣りに関してのすべての知識を吸収してから釣り道具を買いに行きますか? 釣りには、海釣り、船釣り(沖釣り)、川釣り、生餌、練り餌、コマセ、ルアー、フライフィッシング、アユの友釣りなんていうのもありますが、すべての知識を勉強してから始めますか? [図1]

図1:釣りのすべての知識
Image by Olga_spb on Freepik

4. でも、そこじゃない(おそらく)

DXに関して、ここまで(4)コラムを連載してきましたが、印刷会社でDXが進まない理由はここではないと思うのです。要するに最大の問題は、DXにお金をかけても、ITにお金をかけても、なんら売上増につながらないと思っている印刷会社が多いことです。チマチマ損益データを見ても売上が増えるわけでもない、従業員がITを勉強してDXを推進しても、お金と時間をかけただけで、売上が増えるわけでもないという思いがあるからだと考えます。DXは守りであって、印刷需要が急激に減る中で「攻め」もしくは「儲かる話」が欲しいのではないでしょうか。DXシリーズ最後として、次回「攻めのDX」について紹介します。

最終回【その5】「攻めのDX」に続きます。

参考文献

[1] 市谷聡啓、新井剛、小田中育生(2020).『いちばんやさしいアジャイル開発の教本 人気講師が教えるDXを支える開発手法』(いちばんやさしい教本).インプレス
[2] 株式会社サイゾー(Business Journal).“常に100%の完成度を目指して「仕事がデキない」人、8割でやめて大きな成果を上げる人”.「おとなのマネー学・ライフ学」.2016-08-02. 大江英樹. https://biz-journal.jp/2016/08/post_16131.html

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