印刷マニアック

ナンバリング印刷 その3 - 伝票への通し番号印刷のやり方を実機画像を使って図解します

アナログ方式でのナンバリング印刷・図解編

ナンバリングは飲食店の会計伝票や領収書、商品券、チケットなどでオーソドックスに用いられている偽造防止技術のひとつです。前回の「その2」の記事をお読みになった方は、ナンバリング印刷の重要性をご理解いただけたかと思います。

インターネット上初公開?(今のところ)

今回は富沢印刷工場内の実際の印刷機を紹介しながら、どのように会計伝票を通し番号印刷(ナンバリング印刷)しているのかをご覧いただきます。こうした伝票印刷を詳しく画像とともに解説している記事は今のところインターネットでもどこにもありませんので、是非ご期待ください! では…

印刷機:「ハシモト SA22」

当社の印刷工場では、橋本鉄工所製SA22(IMPULSE 22)〔四六判4裁オフセット1色+ナンバリング機〕が現在も稼働しており、30年以上の歴史を刻んでいます。

それでは、ナンバリングのある会計伝票の印刷を行うケースを例にとって、印刷方法を詳しく解説していきます。

上記の図解の通り、画像右側の給紙部から 0. 白紙をセットし、機械内部の 1. の胴回転で伝票の罫線部分の印刷をし、そのまま機械内部を通って 2. の機構でナンバリングの印刷を行います。印刷機に1回通すだけで、印刷とナンバリングが同時にできる仕組みです(ワンパス印刷)。

ナンバリング機械部分

2. のナンバリング機械部分は、このようになっています。赤い○印で示したところが、ナンバリングの機械部分です。画像では4カ所見えますが、回転軸の反対側にも同様に4個取り付けられていますので、合計8個です。印刷機が用紙を1枚ごと内部で通すたびに、回転軸が回転し、合計8カ所にナンバリングが施され、印刷用紙は送り出され、印刷機械の最後部分で揃えて積み重ねされます。

印刷用紙が1回通るごとに、カチッとナンバーが前進

もう少しナンバリング機械部分を詳しく見てみましょう。

ナンバリング機械部分(アップ)
ナンバリングスタンプ

左の画像は実機のナンバリング機械部分のアップです。1回印刷用紙を通すたびにナンバーが刻印のように印刷されます。機械部分の右側に黒い突起があります。これはフックの役目をしており、1回刻印するたびにフックが機械本体の別の固定フックにカチッとあたり、反動を獲て回転し、ナンバーを1つ前に進めます。ちょうど、右の画像にあるナンバー刻印スタンプ文具と同じ仕組みです。

前進? 後進? ナンバーが若い? 老人ナンバー?

ここで少し印刷用語をおさらいしておきましょう。ナンバリング印刷や製本作業において、ナンバリングの数字は意外と間違えやすいものでした。例えば、「手前」、「先」、「後」などは場合によっては数字の多い方を言っているのか少ない方を言っているのか、迷ってしまうことがあります。そこで、印刷・製本業界ではナンバリングにおいては以下のような専門用語を使用しています。

連続番号を打ったときに「数字の小さい方の番手」を「若番(わかばん)」、数字の多い方へ連続してナンバーをふっていくことを「前進」、逆に「数字の大きいの番手」を「老け番(ふけばん)」もしくは「老番(おいばん)」、数の少ない方へ連続してナンバーをふっていくことを「後進」と言います。当社の実機ハシモト SA22は前進ナンバーのみ対応しています。人間の年齢(若さ・老い)に例えるところが面白いのですが、これなら誰もが間違えようのない知的共有となるわけです。

0001から0800までのナンバリングで800枚の会計伝票を刷る

上記のように8個のナンバリング機械を使って、8面付け印刷をすれば、0001から0800までのナンバリングの会計伝票を800枚分印刷することができます。「これで印刷完了! 次の製本工程に進もう!」と思うかもしれませんが、これで印刷完了ではないんです。

その理由は…、図解中のナンバーのふり方をよくご覧ください。そうです! 0001という最も若い番号が一番下になっていますね。前進ナンバーですので、当然です。しかし、このまま製本すると会計伝票の最初の綴りページ(上)に老けた0100番が来て、1冊の最後の綴りページ(下)に最も若い0001番がきてしまいます。これでは製本になりません。伝票をめくっていくごとに0001・0002・0003…と数字が年を取っていったいたほうが、使いやすいに決まっています。

ナンバー戻し

そのため、下図の通り、印刷機を使って空通し(からどおし)をして、ナンバーを戻して上げる必要があります。

こうして印刷された会計伝票の印刷物は製本工程に行き、会計伝票に仕上がるのです。

最後に

3回にわたって印刷マニアックに取り上げてきた「ナンバリング」についての記事、いかがだったでしょうか? こうした昔ながらのアナログ方式の印刷方法の中にも、偽造防止につながるさまざまなヒントが詰まっていると思います。ご感想など、お問い合わせに書き込んでいただけますと大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。

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