印刷マニアック

2023年 ポストコロナの印刷業界 近未来予想 ―その2―

日本の印刷業界の現状と課題

前回のおさらい

前回の記事で、印刷会社はホームページやWebを使って、人手をかけずにラクしてお客さまの売上を伸ばす具体策やサポート策を提案し、解決策をお客さまとともに充分に検討し、お客さまに最適なソリューションを提供すべきと解説しました。
今回はその具体的な手法を紹介する前に、印刷物とデジタル制作物の大きな違いを詳しく見ていきましょう。ここにデジタル方面に事業領域を拡大できない印刷会社の「つまずきポイント」が隠れています。今回も印刷業界にお勤めの皆さまからのご意見・ご質問をお待ちしています。

  1. そもそも印刷物って何ですか?
  2. では、デジタル制作物とは何ですか?
  3. お客さまは本音をしゃべりません!

1. そもそも印刷物って何ですか?

印刷物はそのもの自体が媒体です。まずここをおさえておきましょう。長年、印刷業界に身を置いているとこの概念を忘れてしまいがちです。わかりやすく説明すると以下のイラスト(*1)のようになります。

印刷物とは何ですか?
*1:印刷物とは何ですか?

「なんだよ! 当り前のことじゃないか!」とお怒りの声が聞こえてきそうです。
ですが、本当に理解されていますか?

印刷物はそれ自体が媒体だからこそ、QCDが価値の中心
*2:印刷物はそれ自体が媒体だからこそ、QCDが価値の中心


これが「印刷物はそれ自体が媒体」の内面です(*2)。印刷会社で働く人の中には「印刷業界は、お客様から細かなクレームが多くて、イヤになる」とぼやいている人が多いように思うのですが、「それ自体が媒体」なので、それこそ当り前です。中にはQCDの対応に追われて1日の仕事が終わる、なんていう働き方をされている人もいるのではないでしょうか?
そのような人は「それ自体が媒体」の真の意味をかえって理解されていないことがあります。

2. では、デジタル制作物とは何ですか?

デジタル制作物の仕事のあり方を見てみましょう。まさか、動画を編集した.mp4ファイルデータをお客様に直接手渡しで納品することはありませんよね(*3)。

*3: デジタル制作物は手渡しできません
*3: デジタル制作物は手渡しできません

そうです。デジタル制作物は、制作をスタートする時点から、お客さまがどのように活用したいのか、具体的にはYouTubeなのか、ホームページなのか、SNSなのか、どこにアップロードして広報宣伝をしたいのかをしっかりヒアリングする必要があります。ここに真のニーズがあり、QCDはそのずっと後のニーズです。お客さまは、お客さま側のデジタルプラットフォームにデジタル制作物を効果的に組み込む方法と、お客さまに伴走しながらアクセス・コンバージョンを測定・分析してほしいのです。

3. 【結論その2】お客さまは本音をしゃべりません!

例として、お客さまからホームページをリニューアルしたいという引き合いがあったとしましょう。お客さまの真のニーズは「Webを活用して売上を伸ばす具体策を提案してほしい。アクセス解析を伴走型でサポートしてほしい」ですが、そこをはっきりと印刷会社に伝えません。どのような商取引でも同じことです。もしも、あなたが新車を購入したいと思ってカーディーラーを訪れたとしても、家族での週末ドライブ旅行の理想は語りませんね。EV航続距離や値段、納車時期を質問するでしょう。お客さまは本音をしゃべりません。そして、印刷会社の営業の人たちは、すぐにQCDから質問してしまいます。デジタル制作物は、それ自体が媒体ではないと分っていてもです。その結果は「失注」が待っていて、「デジタル系マーケティング会社と競合したのでは負けて当然」という言い訳で締めくるのは悲しいと思います。

デジタル媒体においてもお客様にとってのデジタル伴走者・サポーターになるためのヒントは、次月のその3に掲載する予定です。ご意見、ご感想、大歓迎です。お待ちしております。

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