AIについてのマニアック・トピックス
1. AI「ChatGPT」の可能性
ChatGPTとは、2022年11月末にOpenAI社(米国・サンフランシスコ)がリリースした対話型のAI言語モデルのことです。また、このモデルを使ってユーザーが対話するためのWebサービスのことでもあります。
対話型AIとは、人間がAIに対して質問やリクエストを提示すると回答や応答をしてくれるモデルのことです。文章だけでなく音声や画像を「生成」して返してくれるので、生成系AIと呼ばれることもあります。
ChatGPTはsign-in手続きをすれば基本、無料で利用できます。例えば「夏目漱石の『こころ』を読んで感想文を1200文字以内で書いて」と日本語でテキスト入力すると10秒ほどで、ボックス内に回答を書き出してくれます。それをコピペすれば夏休みの宿題は30分くらいで片付きます。ただし、ChatGPTがアウトプットする答えには事実と異なること、いわゆるフェイクが含まれていることが多々ありますので、使い方には注意が必要です。また、宿題をChatGPTに頼むことが教育上正しいのかの考察はとりあえず本稿ではステイしておきます。
ここで読者の皆さまに知っておいてほしいことは: AIテクノロジーが従来の機械学習から、ニューラルネットワークによって自動で大量の情報・データを学習・定義できる革新的な深層学習に進化したということです。もちろん、この深層学習のシステムを設計し、AIに情報を学ばせているのは人間です。そして、これまでにない超高度なAIモデルを開発したことを世界に知らしめるためにOpenAI社はChatGPTをリリースしたのです。
2. 強いAIと弱いAI
「強いAIと弱いAI(Strong AI and Weak AI)」は、米国の哲学者ジョン・サール(1932-)が考案した用語です。サールは: (1) 自ら課題を発見し、自律的に能力を高めていく「汎用型AI(強い)」と; (2) 人間が課題を発見し、人間が能力を高めていく「特化型AI(弱い)」に概念を大別しました。
強いAIは、ヒトのように自ら思考するAIのことですが、現在の科学技術では強いAIを創り出すことは不可能です。ドラえもんなど、マンガやアニメに登場する空想上のロボットがそれにあたります。人型ロボットでお馴染みのPepper(ペッパーくん)や米国Boston Dynamics社のSpot、加えて上記のChatGPTは強いAI(汎用型AI)ではなく、推論、言語、画像、音声を複合した弱いAI(特化型AI)です。
こうした概念を踏まえて、哲学者サールは次の疑問を世に提示したのです。
◉ 強いAIにあって、弱いAIにないもの、それは心(Mind)ではないのだろうか?
◉ では、人間の心(Mind)はどこにあるのだろうか?
そして、「心の哲学(Philosophy of Mind)」という分野を確立し、「心のありか」を深く研究していくことになります。[*2]
3. ヒトにしかできないこと
印刷会社で働く営業マンにとっても「心」は非常に重要な要素です。
では、AIにはできなくて、心を持つヒトとして印刷営業マンにしかできないことは何でしょうか?
そんなことわかってるよ! お客さまとの「信頼関係の構築」でしょう!
はい、そんな声が聞こえてくると思いました。
間違ってはいないのですが、おしいんです。もう少し考えてみましょうよ。
AIではなくて、ヒトである印刷営業マンにしかできないこと。
それは「営業目標を達成すること」と「粗利益を稼ぐことです」。この2つを成し遂げるためには「お客さまとの信頼関係の構築」が必要不可欠なのです。
今、皆さまが行っている印刷営業の仕事、それってAIでもできる仕事ですか? それとも、心を持つヒトでしかできない仕事ですか? それを考えるきっかけになっていただければ幸いです。
参考文献
- [1] OpenAI社. “ChatGPT: Optimizing Language Models for Dialogue”. https://openai.com/blog/chatgpt/
- [2] ジョン・R・サール(2018).『MIND(マインド)心の哲学』(山本貴光・吉川浩満訳). ちくま学芸文庫
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