パソコン画面と同じものが当たり前のようにプリントできる。
それは、一昔前は考えられないことでした!
DTPの礎、PostScriptの誕生 ①
<Adobe Systemsの誕生>
1970年に米ゼロックス社がその後のコンピュータ・アーキテクチャ(構造設計)の開発の為にパロアルト研究所を開設しました。GUI(Graphical User Interface)、マウス、イーサネット、VLSIなど、今では日常的に使用されている技術の多くを研究し、発明が行われた場所です。
そこで働いていた2人の研究員、チャールズ・ゲシキとジョン・ワーノックはInterPressという解像度に依存しないグラフィックの表示方法の研究開発を行っていましたが、ゼロックス社はこの研究をビジネスに利用しないとしたことで、2人は独立を決意し、1982年に「Adobe Systems」というベンチャーを立ち上げました。
その少し前の1979年にスティーブ・ジョブスとビル・ゲイツが研究所を見学に訪れ、特にGUIに着目したそうです。今では当たり前ですが、当時のコンピュータを操作するのは非常に難しく、コマンドベース、またはプログラムして動作させるという専門知識がないと動かすことのできないものでした。
①画面上にカーソルが表示され、②マウスで移動させ、③クリックして実行させるという概念自体が無い時代でしたので、衝撃的なことだったと思います。
※後のMacintoshのユーザーインターフェースです。
<PostScriptの発表>
Adobe Systemsを立ち上げ後、自分たちが開発したページ記述言語をPostScriptとして世に発表しました。PostScriptとは画面上に表示されるフォントやグラフィックを縮小・拡大を繰り返しても綺麗に表示され、かつ印刷しても画面上と同じ大きさで、滑らかに印刷できるようにするプログラミング言語です。簡潔にいうと「画面上のどこにある」「何を」「どの大きさで」表示する、または印刷するという指示が延々とプログラムとして書かれています。
同時期の1983年頃、Apple Computerでは画面上の表示通りに印刷できるプリンターを開発中でした。当時のプリンターは印刷しても画面上通りには印刷されず、文字の形状などもガタガタしているものが当たり前の時代でした。そこでジョブスはPostScriptに目を付け、世界初のPS(PostScript)プリンター「Apple LaserWriter」が発売されました。このプリンターは受け取ったイメージデータをプリンターの解像度に合わせたビットマップ画像に変換するという、今でいうRIP(Raster Image Processor)の機能を持ち合わせた高性能なプリンターでした。私自身も1990年代前半に職場で使用していました。当時としてはA4モノクロプリンタにもかかわらず、非常に高価な物でしたが、作成したものがイメージ通りにそのまま紙に印刷されるのは感動したものです。
当時としてみれば、A4サイズの中に用紙の端から20mmの所に直径50mmの丸いオブジェクトが配置されているものをプリントした場合、画面上と同じ位置に同じ大きさのオブジェクトが印刷されるというのは、非常に画期的なことでした。
この技術のおかげで、あと3mmズラして、大きさは50mmから60mmに変更などの正確な表現が可能となったのです。
※イラレ上でA4白紙に「TOMIZAWA PRINT」と入力しただけのaiファイルを、テキストアプリで開くと、なんと約23,000行ものPostScriptが書かれています!
今回はここまでとなります! 続きの②ではPDFが誕生するまでをご紹介します。