日本の印刷業界の現状と課題<最終回>
前回のおさらい
前回は印刷物とはそれ自体が媒体であることを解説しました。一方、デジタル制作物は目に見えないデータであり、お客さまはデジタル制作物を、どこに、どのように置いて、活用したいのかをヒアリングすることから始めなくてはならないと補足しました。
今回は、富沢印刷の社内で、偶然にも良い事例がありましたので、これをケーススタディとして読者の皆さまに質問を投げかけさせていただきます。皆さまは、どのくらい答えられるでしょうか? 一緒に考えてみてください。
- 年賀状の宛先って?(富沢印刷の事例紹介)
- 皆様へ問題です。どのように答えますか?
- 【結論3】まずは自社でやってないと売り込めない
1.年賀状の宛先って?(富沢印刷の事例紹介)
12月のこの時期、多くの印刷会社さんは、年賀状の印刷・宛名印字の仕事がラストスパートに入っているのではないでしょうか? 富沢印刷でも毎年、自社の年賀状を自社内で印刷し、お客さまに年始の挨拶として郵送しているのですが、宛先住所を整理する上で、社内でこんなやり取りがありました(*1)。
毎年、年賀状を売り歩いている富沢印刷の営業マンもようやく、この疑問にぶち当たりました。そもそも年賀状って、なんのためにあるんだろう? ビジネスにどう生かせるのだろう? こんなこと考えもせずに年賀状を売っていたんだなぁと、私たちは初めて気付いたのです。
皆さまは、この話、分かりますか? お客さまに、年始の挨拶として年賀状を送るのが当たり前と思っていましたが、それでは誰に送るのが、営業効果として、そして会社利益としては最も有効なのでしょうか? 頻繁にお取引頂いているお客さまに年賀状を出すのが効果的ですか? それとも、あまりお取引をいただけていない疎遠顧客に自社の存在を思い出してもらうために年賀状を送るのが得策ですか? いやいや、そんなこと考えてないで、全部のお客さまに送るのが常識なんだよ! 第一、お客さまを差別するなんて失礼きわまりない! えっ、本当にそうですか?
2.皆さまへ問題です。どのように答えますか?
それでは、印刷会社にお勤めの皆さまへも同じ問題を出します。次のお客さまの問いかけに、皆さんでしたら、どのようにお答えしますか(*2)? 年賀状を作りたいと言っているのだから、印刷会社にとっては良いお客さまのようですよ。
3.【結論3】まずは自社でやってないと売り込めない
デジタルシフトが加速的に進んでいることは間違いありません。お客さまの企業活動においても、広報宣伝・販売促進においても同様です。ですから、2023年の印刷需要はさらに大きくダウンすると予想せざるを得ません。印刷会社の皆さまも、肌身でそう感じておられますよね。このことは<その1>で述べました。
印刷需要の落ち込みを補うには、自社の事業領域をデジタル制作の方向へ拡大することが現在の印刷業界にはベストな選択だと考えます。理由1): これまで培ってきた印刷会社とお客さまの関係性、コネ、御用聞き営業体制とその対応ノウハウは非常に価値が高く、このベースを活かし、新しいサービス提案=デジタル提案を受け入れてもらえるチャンスは大いにあります。理由2): パンフレットやチラシを作ることも、Webサイトや動画を作ることも、お客さまの目的はまったく同じで、宣伝・拡販です。QCDだけを目的にして仕事を進めることは印刷会社の内側の世界の話で、お客さまと共通の目的をともに進めていくことができるかが転換のカギとなります。このことは<その2>で述べました。
最後の結論として、まずは自社が自社のためのデジタルマーケティングに自社内でチャレンジしてみることをおすすめします。皆さまの印刷会社では、自社のWebサイトはどのように展開していますか? 集客・受注に結び付いていますか? 動画などで自社PRをされていますか? YouTubeチャンネルはどのように活かしていますか? メールマガジンは? マーケティングオートメーションに取り組んでいますか? 自社がやっていないサービスをお客さまにいくら提案しても採用されることはありませんよね。
「私は印刷営業マンだから、会社がやっているホームページとかメールマガジンとかは、まったく関係ありません!」 本当にそうでしょうか? それでデジタルシフトができますか? デジタルシフトをお客さまとともに考え、戦略を立案し、提案し、展開していくことができますか? デジタル方向に事業を拡大するとはそういうことです(*3)。
もし、よかったら、この年賀状の記事をきっかけにして、自社のデジタルシフトを考えてみてください。2023年が皆さまと皆さまの会社にとって良い年になることを祈念いたします。
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